死刑囚の男「灰谷ヤミ」と時空の魔女の「火置ユウ」。火置ユウは時空の出入り口を間違えてしまい、灰谷ヤミが捕まっている独房にワープして来てしまいました。
独房という名の密室に閉じ込められて3日目。二人は前回に引き続き魔法について会話をしているようです。今回のテーマはいったいなんでしょうか?このシリーズはいつまで続くのでしょうか?
なお物語本編「夏休みの夕闇」はこちらから。
※前回の魔法講義はこちら

「…………火置さん?」
「はい?」
「『魔法使い』と『魔道士』についての話をまだ教えてもらってない」
「……人使いが荒いな!」
「暇なんだって。わかってくれよ」
「仕方ないなあ~あなたの暇つぶしのために一肌脱ぐよ!何を隠そう私も暇だしね……。それじゃあ今日のテーマは『魔法使いと魔道士』」
「あ、ちょっと待って!」
「……なんですか」
「魔術師とか魔導士とか賢者とかの違いもよろしく」
「言おうと思ってたのに!」
「魔法使い」と似ている言葉
「言われちゃったけど、魔法使いと似た意味で使われる言葉には『魔道士』『魔導士』『魔術師』『呪術師』それから……高度な魔法使いを『賢者』なんて呼ぶこともあるね。『魔女』との違いに関しては前回やったからいいわよね?」
「魔女以外全部教えて」
「OK。今回の話の肝は3つかな。その一、『~士』と『~師』の違い。その二、魔法の別称。その三、魔法職について」
『~士』と『~師』の違い
「『~士』と『~師』って、日本語でも違いがあいまいだよね?保育士、歯科技工士、看護師、美容師」
「そうなのよねえ。両方とも特定の技能を持った人、って意味になるらしくて……。国語辞典にそう書いてあった」
「それじゃあ、魔道士と魔道師にはそんなに違いがないってこと?」
「そうね、そんなに違いはない。ただ、『魔道士』は魔法使いとして働く人。『魔道師』は熟達の魔法使い、そんな印象はある」
「なるほど」
「でも、『魔道師』を職種の名称として掲げている世界もあるし、本当にその違いは曖昧ね。その世界に生きる個人ごとにも捉え方が違ったりする。
だから、魔法使い関連の『~士』『~師』についてはあまり違いを気にする必要はないっていうのが、結論かな。その世界で最も使われている名称に統一しとけば問題なし!」
「なるほど、魔法のある世界によっても、どっちの言葉をメインに使っているかが違うんだね」
「そういうこと」
魔法の別称
「魔法の別称には、こんな例がある。探せばもっと色々あるかもしれないわ」
- 魔術
- 妖術
- 呪術
- 霊術
- 仙術
- 幻術
「これらの違いは?」
「極論を言うと、全部同じ『魔法』ではある。おおまかな仕組みとしては一緒なの」
「そうなんだ」
「うん。詳しい仕組みについてはそのうち教えてあげるけど、魔法とは『精神の力』と『4つの要素(エレメント)』の組み合わせで成り立っている術全般のことを指す。そしてさっき紹介したすべてが、同じ仕組みのものなの」
「これももしかして、各世界によって呼び方が違う……なんていう違いなの?」
「そういうケースもあるわね。A世界では魔法のことを一般的に『魔術』と呼んでいて、B世界では魔法のことを一般的に『呪術』と呼んでいる……とか。ただ」
「ただ?」
「魔法を細かく色分けして、『魔術』『呪術』『妖術』……と分類することもある。例えば、魔法に+アルファで生体を混ぜ込んで発生させたものを『呪術』と呼ぶ、みたいな」
「……呪術というものは、魔法の力に誰かの血を数滴加えて呪いを唱えて……的な感じ?」
「その通り!実際『呪術』と呼ばれるのはそういった特徴を持つものが多いかも。血に限らず、生き物の一部を発生の過程で使うってのがね。あと『妖術』は、人外が使っている魔法を転用したものを指す、とかも多い」
「妖怪の術が『妖術』?」
「そうそう!ただしさっき言った通り、『魔法』と全く同じ意味で『妖術』という呼び方を使っている世界もあるから、全時空共通で『妖術=コレ!』っていう定義はできないかな。世界単位で、各々魔法に関する言葉の意味を定義をしているってこと」
「なるほど」
まとめ
「ちょっと長くなっちゃったから、ここまでの内容を一旦まとめるね」
「うん、僕がやるよ。こんな感じかな?」
- 『魔法使い』と似た意味の言葉は色々あり、『~士(師)』と呼ばれることが多い
- 『~士』と『~師』の違いはあいまい(例『魔道士』と『魔道師』)
- 世界によって魔法に関する呼び方の定義が異なるので、その世界に通用する言葉を使うべし
- 『魔法』には『呪術』『妖術』『魔術』などの呼び方があるが、基本の仕組はすべて一緒
「完璧ね!ありがとう」
「どういたしまして。……それじゃあ次は、魔法職について、だね!」
「灰谷ヤミくんはやる気十分だねえ~それじゃあ先生、頑張るよ!」
「やった!」
※灰谷ヤミと火置ユウの刑務所生活、3日め付近の話はこちら

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