時空の通り道を使って、死刑囚「灰谷ヤミ」の独房にたまたまやってきてしまった時空の魔女の「火置ユウ」。やることがなくて暇な二人は「時空」や「魔法」についての話をしているようです。物語本編はこちらから。
時空とは
「『時空の魔女』の時空ってなに?時空って……そもそも何なの?」
「いい質問です、灰谷ヤミくん」
「ありがとう」
「私の魔法書も、第一章はそこから始まる。『時空とは何か』。今日は魔法学の時間にしましょう」
「はい先生」
「時空っていうのは、『共通の時間軸』のこと。時空という大きな川の流れがあると想像してほしい」
「『時空』は『川』……?」
「そう。時空という大河に、いくつのもの世界が水風船みたいにプカプカと浮いていることを想像して」
「想像できる。いろんな色の水風船が流れていくところが想像できる。みんな同じ方向に向かっている」
「その通り!大河に浮かぶ水風船はどれも、流れに逆らわない。場所によって流れの早い遅いはあったりするけれど、結局はみな同じように同じ方向に進んでいく。
時空も同じ。時空を漂う無数の世界は、みな同じように時を重ねていく。でも世界によって、ちょっとした時の流れの速さの違いはある。全体で見た時の大きな時間の流れ、そのものが『時空』である」
「で、『世界』は水風船の中にあるものってことか。だからそれぞれの世界は別個のもので干渉しないし、中から外のこともよくわからない。さらにお互いの中身がどうなっているかもわからない……そういうこと?」
「そういうこと!良い生徒だねぇ、ヤミくんは」
「褒められた」
時空の通り道と時空の歪み
「で、君は時空の魔女でしょ?時空の通り道を通れて、時空の歪みを直せる唯一の人間」
「そう。さっき説明した通り、『時空』は大きな川の流れ、『世界』が川に浮かぶ水風船だとすると……時空を通って別の世界に行くっていうのは、水風船から水風船へ川をわたりながら移動していくみたいな感じかな。たまには逆流したりもしながら。
実際の川にも、目には見えないようなものすごく繊細な潮流があるでしょ?それを捉えて、渡っていくイメージ」
「普通の人は、自分が生まれた世界の外には出ないっていうことだよね?一生を同じ水風船の中で過ごす」
「そう。基本的には、自分がいる水風船の外に出る術はない。でも水風船の外に出れちゃうのが、時空の魔道士・時空の魔女ってこと」
「ちょっと羨ましい。この世界と自分が合わないなと思っても、別の場所に行けるんだから」
「それは大いにあるかもね。実際のところ、私はそれに助けられてる。
そして『歪み』っていうのは、最初会った時に説明した通りかな。世界を覆う膜の亀裂、世界と時空の間にできてしまった、本来あるべきではない歪み、そういうもの」
「よくわかった。まとめていいかい?」
「え?あなたがまとめるの?」
「うん、つまり今までの話はこういうことだね」
- 時空とは、共通の時間軸のことであり『大きな川の流れ』にたとえられる
- 世界とは、時空の中に存在する個別の宇宙のことであり、『時空という川に浮かぶ水風船』にたとえられ、無数に存在している
- 同じ時空にある世界は、どの世界も同じように時を重ねていく
- 時空の魔道士は、本来は不可能な『時空を超えた世界間の移動』ができる
「とてもわかりやすいです……」
「ありがとう」
「今日の講義はおしまい。気が向いたらまたやるね」
「すごく楽しかった!」
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