時空の通り道を使って、死刑囚「灰谷ヤミ」の独房にたまたまやってきてしまった魔法使いの「火置ユウ」。やっぱり暇をもてあました二人は、前回同様に魔法についての話をしているようです。
なお物語本編はこちらから。
※前回の魔法講義はこちら

魔法使いと魔女
「そういえば気になってたんだけど」
「ん?」
「『魔法使い』とか『魔道士』と、『魔女』ってどう違うの?っていうか違うの?」
「いい質問です。灰谷ヤミくん」
「でた!火置さんの先生モード」
「では今日は、魔法講義の続きをしましょう。『魔法使いと魔女』について」
「……。!……はい!」
「灰谷ヤミくん、どうぞ」
「いきなり当たってたらごめんね?魔法使いと魔女は、フライトアテンダントとスチュワーデスみたいな……、看護師と看護婦みたいな、そういう違いではないでしょうか、先生」
「…………」
「…………まさか、あたり?」
「話が終わっちゃう!」
「やっぱり」
「いや、待って!でもね、そうなんだけど、そうではない」
「というと?」
「まず『魔法使い』という言葉が指すものは、かなり幅が広い。ほんのちょっとでも魔法が使えたらそれは『魔法使い』って言えるし、魔法を使ってバリバリ働いていたらそれも『魔法使い』だし、男だって女だって魔法を使えたらそれはもう『魔法使い』」
「その中でも女性だけをくくったものが『魔女』ってこと?」
「基本的にはね。でも『魔法使い』と『魔女』っていう言葉が使われやすい場面の違いはあるよ。ちなみに印象として、魔法使いと魔女の違いってヤミは何か思いつく?」
「うーん、魔女のほうがなんか……こう言ったらあれだけど、悪い印象があるな。悪役っぽいというか」
「その印象は当たらずとも遠からずなの。あくまでも傾向としてだけど、魔女は自分自身や生活のために魔法を使う人もすごく多い。一方『魔法使い』と言ったら、職業的に魔法を使う人を指すことが多い」
「なるほどな……白雪姫のお母さんとかまさに『自分自身のため』に魔法を使う魔女だね」
「そうそう。でも『自分のため』とはいっても、周囲の役に立っている例もある。例えば『薬草売買』『占星術』『未来予知』『治癒魔術』『人生・恋愛相談』……こういったものでコミュニティの知恵袋的な立ち位置を確立している魔女達ね。こういう人はあらゆる世界に無数に存在する。
それでもやっぱり、あくまでも生活のためっていう印象は強いかな。物々交換で頼み事を聞いていたり、コミュニティに守ってもらうことを条件に力を貸していたりとか、そういうケースが多いのよ」
「ちなみに『時空の魔道士』と『時空の魔女』は、それこそ看護師と看護婦的な違いでいいの?」
「そうね、それはその違いで考えていいよ。……でも、やっぱり私自身は『魔法使い』とか『魔道士』って呼ばれたいかな。『魔女』だとどうしても、恋愛成就の妙薬とか黒魔術とかの印象が頭をちらつくのよね……。いや、もちろん全員じゃないんだけど……何度も言うんだけど……」
「職業の呼び方の違い……なんか『ジェンダー論』みたいになってきた」
「ジェンダー論とは違うけど、次は男と女と魔法の適正についてでも話そうか?」
「なにそれ、聞きたい!」
「その前に、今日のまとめね」
- 魔法が使えれば、誰もがみな「魔法使い」である
- 女魔法使いは「魔女」と呼ばれることがある
- 「魔法使い」という言葉は、魔法を使う職業の総称として使われることが多い
- 魔女は、個人的な目的や生活のため・自分が属する地域のために魔法を使う人が多い傾向がある
「……『魔法使い』と『魔女』についてはよくわかった。それじゃあ、『魔法使い』と『魔道士』の違いは?」
「それもまた今度!長くなっちゃうよ」
「時間はたくさんあるんだから話そうよ」
「休憩させて」
「わかったよ……」
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