気が利く男・気が利かない女
「はい、どうぞ」
「!扉開けてくれるんだ……ヤミって気が利くね」
「そうかな?」
「うん、私よりずっとね」
「……そうかも。確かに君は気が利かないよね」
「んなっ!!めちゃめちゃはっきり言うじゃない……!」
「……自分で言ったじゃないか……『私より気が利く』って……」
「ち、ちなみに……どこでそう思ったのよ……!」
「この間二人で図書室に行ったときさ……目の前で扉を閉められてどうしようかと思った。一緒に歩いてたのに。嫌われたのかと思ったよ」
「ご、ごめん!あれは……ぼーっとしてて……!一人生活が染み付いてて……!」
「……別に気にしてないからいいけど……」
「ごめんってば!」
図書室にて
「んぐぐぐぐ…………」
「取ろうか?……というか、向こうに踏み台あったよ」
「背伸びして指先届いたし、いけるかなと思って……!」
「………………ズボラ」
「うっ!」
「まぁ、いいや。はい、どうぞ」
「ありがとう……」
「……ありがとうって顔じゃないのはなんでだ」
「背が高いのずるい……」
「……君は身長何センチ?」
「…………167」
「……………………本当に?」
「…………」
「あ、わかった!157だ!10センチのヒール履いてるって言ってたもんな」
「ちっバレたか」
今日の天気
「あ、火置さん。今日はいい天気だね」
「本当だ」
「………………いい形の雲が浮かんでる」
「本当だね」
「……本当に無駄話が苦手だね?」
「え、ごめん!……でも私が本気で雲についての話を始めたら止まらなくなっちゃうけどいいの?ちょっとついていけないって思うかも」
「え、どういうこと」
「あれは羊雲だとか筋雲だとか綿雲だとか雲図鑑的な話になって、なんなら積雲だとか高積雲だとかいう気象用語を使いだし……」
「僕も空が好きだからついていけるよ。空の仕組みについての本とか図鑑とか写真集とかは結構読んできた」
「でもそのあと気象全般の話になって、地球規模の気候変動の話になって、生物の進化の話になって哲学の話になってそれで……」
「そういう話がしたいよ。君も遠慮せずに思ったことを言ってほしい」
「…………ヤミって……」
「ん?」
「変わってるよ」
「そうかな」
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