夏休みの夕闇~夏休み編~ 第十話 その日僕はある不吉な夢を見る

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その日僕はある不吉な夢を見る

…………あれ、ここはどこだ?これは夢かな?

でも、今日の夢に火置さんはいない。最近火置さんの夢しか見ていなかったから、珍しいな。

周囲は真っ暗闇。……イヤな予感がする。暗闇の夢に、ろくなことはない。刑務所の夜も、暗闇の悪夢には散々な気分にさせられてきた。

……やっぱり、嫌な予感は的中していた。これは間違いなく『悪夢』だ。だって目の前に、あいつ・・・がいる。……大学生の時に僕が殺した、あいつ。刑務所にいるときも何度か夢に出てきたっけ。

悪の中の悪。僕の考えた『光と闇を分けるチェックリスト』で『完全なる闇側』に当てはまる……僕が出会った中で最も邪悪な人間。

無視したかったのに、向こうはニヤニヤ笑いながら話しかけてきた。

「久しぶり」

「…………何しに来たの」

「冷たいねぇ、わざわざ会いに来てやったのに」

「…………お前は死んだだろ」

「体はな」

「体も何も、死んだらそれで終わりだろ」

「でもお前の記憶には残ってる」

「それは『生きている』ことにはならない」

「そうか?重大なことを忘れてるぞ?」

「……なんだよ」

「お前が今いる世界は?」

「…………僕の……記憶の世界」

「そう、その通り!やったな、俺に会えるかも」

「!冗談だろ?」

「ははっ!冗談だと思っていればいいさ!楽しみだな、会えるのが。いつ会う?どっかで待ち合わせする?
そうだ、火置ユウ紹介してくれよ。だってあの女はお前の………………。お前の?……んー……お前の何なんだろうな?あの女は。ははっ、早いとこヤればいいのに、お前ってチキンだね!」

「…………」

「じゃあ、うっかり殺さないように、あの女が生理のときに会いに行くよ。俺は生理中の女は殺さないからな!って、前にも言ったっけか?それに、火置ユウを殺したら、お前にまた殺されそうだし。2回も殺されるのはさすがにカンベン」

「………………」

「ま、俺は約束は果たすから。『お前を一生不幸にしてやる』。自分だけ幸せになろうだなんて、そんなバカなことあってたまるかよ?なあ?」

「散々好き勝手生きてきたくせに、死んでまで僕の邪魔をするのか?」

「おいおい、お前だって好き勝手生きてきただろ?大好きなだけ神様のことを考えて、一人で好きなように生きてきた。ある意味で俺達は似た者同士だ」

「一緒にしないで欲しいよ……全然違うだろ、僕と君は……」

「さあ、どうだろう?闇に生きる者って点では、似てると思うけどね。
ま、でも女の好みは全然違うかな!俺はもっと、儚げで奥ゆかしくて黒髪ロングストレートで、俺を立ててくれてスレンダーで折れそうな美人タイプの娘がいいもん。

火置ユウってちょっと気が強すぎない?ケツと太もももでかいし。あんなに言い返されたら俺ならムカついちゃうけどねぇ。お前って、性格だけじゃなく女の好みも変わってるんだな」

「…………」

「ま、いいか。楽しみにしてろよ。俺、そのうち会いに行くから。忘れた頃に会いに行くから。ドキドキしながら待ってろよ?わかった?」

「黙って消えろよ……」

「はーい、消えますって……」

そう言ってやつは、悪しき魂がまとった汚いオーラみたいな濁った黒い煙を残して、暗闇の中に消えていった。

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※ヤミが殺した彼が出てくる夢

※彼とヤミのエピソード

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