夏休み初期の「普通のやつ」

夏休み初期の「普通のやつ」

そうだね、今日は『普通のやつ』の話をしようか。ペラペラ喋らないでやる、『普通のやつ』。
……何のって?それを聞くのは野暮ってもの。すぐに何のことかわかるよ。

だいたいそれ・・が始まるのは『昼ご飯を食べたあとのまったりした時間』か、『寝る前』が多い。

なんとなく見つめ合う。お互いの体を触りたくなってくる。服の上から触る。ドキドキしてくる。
そして、どちらかが言う。

『ベッドに行こう』

交互に軽くシャワーを浴びて、ベッドで向かい合って体を触り合うの。体を触るのは、いつもだいたい2、30分くらいかな。もっと触ってることもある。

二人はかなり丁寧に触っていく。髪、顔、首、腹、腕。どちらかというと『性的じゃない部分』を先に触る。お互いの体の違いに、いちいち感動する。

キスはまだしない。キスするとすぐ先に進みたくなっちゃうから。

「ヤミのここ、骨出てるね」

「火置さん鎖骨キレイ」

「首の筋、すごく目立つ」

「腕、滑らかだ。僕のと違う」

このときは、ムラムラというよりドキドキ。次は何が見つかるかな?自分と何が違うかな?相手ですら知らないこと、何か見つけられるかな?

お互いの体の表面を冒険する。冒険して、発見する。発見するたびに、喜びと興奮が満ちる。あっと驚く意外性に、心を揺さぶられる。

お次は『胸』。ここから空気の色合いが変わっていく。二人の息が、甘ったるくなってくる。

火置は灰谷の胸に耳を当てて心臓の音を聞くのが好き。胸にキスするのも好き。皮膚が透けそうな、繊細な印象の彼の胸にドキドキしてくる。と思えば――ランニングとスイミングが趣味の彼の、想像より硬い胸板に……切なくなってくる。

灰谷は、両手のひらで乳房を包むところから始める。いきなり乳首なんて行かないよ。頭が変になっちゃうもん。
両手で胸を包んだら、火置の表情を見る。彼女のため息が多くなる。彼もドキドキが高まる。柔らかくもんだり、指の間に入れた乳首を軽く挟んだりして、じわじわと興奮していく。手を離すと、その時彼女の両方の乳首はピンと立ち上がっている。

目が合ってキス。お互いの胸を触りながら。
火置は体が動く。足元をもじもじさせちゃう。それに気づいた灰谷も高まる。もう、半分くらい勃起してる。

もう一度、キス。今度は深い。灰谷は、隙あらばディープキスをしたいと思ってるんだよ。だって火置が目に見えてとろけていくから。
でも火置だってただ溶かされてやられてるだけじゃない。負けじと舌を入れて応戦したりして、そうするともっとクラクラして盛り上がる。その日によって戦況が変わる、二人の心理戦。

そして、二人の体触りは下半身に移る。そこ・・から遠い場所から、順に。足の甲を撫でて、足首からするすると触っていって――中心にたどり着く。

彼のは一目見るだけで、大きく長くなっているのが明らか。
彼女のもすごい。まだそこに指一本触っていないけど、完全にトロトロに溶けている。

彼女は彼のを、愛しさを込めてふわりと握る。両手のときもあれば、右手だけのときもある。

彼は彼女の中心を撫でる。最初はふっくらした部分、次に粘膜の部分。そして粘液の付いた手で、小さく飛び出た部分を。

彼は、自分にはないこの小さな突起が大好き。この突起は、ちょんと触るだけで彼女がガラリと変わってしまう魔法のスイッチだ。毎回うっとりと「かわいい……」って呟いちゃう。

大きく跳ねた彼女の様子を確認してから、彼はクルクルと一番敏感なその場所を撫でる。彼は『一度イかせてから』彼女に入ることを目標にしている。

5分から10分くらいは撫で続けて、彼女を一度絶頂させる。彼女は彼にしがみついて、小さく叫びながらビクビクする。止められないビクビク。

ビクビクしているまさにその時に、彼女に入っていく。充血した中がぷくぷくと腫れて彼を締めつけて、とても気持ちいいから。
我慢してたことも重なって、入っていく瞬間に意識が分離しそうになるほど。

そしたら彼は、ゆーっくりと動く。彼は彼女の反応を確かめるように。火置は最初、あまりにも灰谷の動きが遅くて驚いたんだって。

だって5秒かけて入口から奥に行くくらい……そのくらいゆっくりなんだよ?

にゅ……にゅ……にゅ……ってゆっくりと進む彼の感覚に、彼女の首筋には快感の鳥肌がバーって立つ。気持ちいいけど、もっと早く動いて欲しい……そんな、もどかしいような、じれったいような、でもずっと続けてほしいような……そんな気分になって身悶える。

感覚を研ぎ澄ませたくて目をつぶったり、でも相手のことが見たくて瞼を開けたり、二人は切ない思いを爆発させそうになりながらお互いを知る。上と下を交換したりする。

もう彼女の中はびちゃびちゃ。彼も息が抑えられない。
ゆっくりだから、ゆっくり高まる。ゆっくり高まるから、高い山を登れる。天国が見えるくらい、空気の薄い高い山のてっぺんに行く。息を喘がせて、見たことのない景色を目指す。

このまま二人で頂点へ行って、終わりに向かうのもいいんだけど……

……これで終わらないのがこの二人。彼は一旦動きを止めて、もう一度彼女の突起をクルクルする。一度イッた体はとても敏感。しかも今、中には彼のが入ってる。
さっきよりずっと短時間で、彼女は絶頂する。彼女がイく時の、さざなみを思わせる内部の独特な痙攣を、彼はつながってる部分で味わう。

オーガズムで脳内麻薬のベータエンドルフィンが出ちゃってる彼女は、もう何をされても気持ちいい。動いて、動いて……って、無意識に口からこぼれる。
彼はさっきより少しスピードを上げて……でも、2回目の彼女の中を記憶に刻みつけるようにねっとりと動く。でも、彼の腰も震えてくる。ああ、気持ちいい。もう、出そう……。まだ終わりたくないのに……。

ぷちゅん……ぷちゅん……ぷちゅん……っていう、たっぷりとした水の音が部屋に響いて、二人は自分たちが溺れる錯覚を起こす。お互いの熱に、溺れる。終わりたくないけど飲みこまれる。……でも、飲み込まれる苦しみもまた幸せ。

目を固くつぶって我慢するけれど、抵抗も虚しく彼が達する。達するときは、一番奥まで挿し込んで。お互いにぎゅーっと抱きしめ合う。

そんなセックスを、二人は繰り返している。

※別の「二人の愛し方」を見る(クリックで開閉します)

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