シャワールームでしたこと

※「夏休みの夕闇~刑務所編~」本編の裏側

ダメだ。さっきから、そのことばっかり考えてしまう。

やっぱり夢の威力というのはとても大きい。

一度見た夢は深層心理にしっかりと刻まれてしまったようで、ふとしたタイミングで夢の内容が思い浮かぶようになってしまった。

光の部屋の祭壇の上で彼女を抱いたこと。彼女は深く眠っていたけど、眠りながらもその体でとても優しく僕を包んでくれたこと。とろりと濡れた、彼女の内部。そこに僕のものが、ゆっくりと飲み込まれていく、あの感覚……。

夢の彼女の肌はしっとりとして柔らかかった。白くてピカピカしてて、触ると吸い付いて、ぬいぐるみとはまた違った、ナマモノ特有のふわっと感があって……。太ももを触ると、少しだけ自分の指が脂肪に沈む。優しくしなくちゃいけないのに、その柔らかさに頭が燃えそうになるんだ。自分の手で肌を強く握って、真っ赤に跡をつけたいって、そんな気分にさせる。

火置ひおきさんは、体の表面がとても柔らかい。それは、夢ではなく本当のこと。……あのとき、旧刑務所から脱出した時、それを思った。彼女に抱きしめられて、刑務所の扉から落ちていった時。

彼女にぎゅっと抱きしめられて、僕はとてもドキドキした。甘い匂いがするなって思ったんだ。このままずっとずっと落ち続けて、あの落ち続ける暗闇の中に閉じ込められたいって思った。そうしたら、火置さんが永遠に僕を抱きしめ続けてくれる。柔らかくて小さい体で、一生懸命、僕を離さないようにぎゅっと。

……ああ、苦しい。どうしてこんなに苦しいんだ。苦しくて苦しくて、君に当たりたくなる。

その思いが昨日、態度に出てしまった。君に意地悪なことを言ってしまったんだ。『君が僕を殺して』って。火置さんは絶対に嫌がるってわかってて、言ってしまった。

だって今の僕はもう、君を苦しめたいとしか思えない。僕と同じように胸の痛みを感じてほしいし、僕が死んだらその後で僕よりももっと苦しんでほしい。

僕も、結局あいつと同じような事を思ってる。僕が殺した、悪の中の悪と。あいつも僕に言っていた、『お前、誰よりも不幸になれよ』って。

溜まっていく感じがわかると、頭がモヤモヤして、ちょっとイライラしてくる。僕が日中平常心を保ちながら火置さん会話するには、急速に溜まっていく膿を毎日しっかり出すしかないと思ってる。誰にも見られない、シャワーの時間に。

だから、出そう。もう僕のものは大きく固くなっている。シャワーの水圧がくすぐったい。自分の息が少し上がっているのがわかる。興奮しているんだ。

何を考えよう?火置さんの声が聞きたい。感じている声。どんな声かな?彼女の普段の声は、落ち着いている。高すぎず低すぎず、心地いい周波数帯の声。そんな彼女が感じたら、どんな声になるんだろう。

僕は目をつぶり想像する。誰かに抱かれている火置さんを。だって、僕に抱かれても声を我慢して、聞かせてくれない気がするから。彼女が心を許して体を開く誰かに抱かれているところを……想像する。

「あっあっ、やっあっだめ、あっ」

「ダメじゃないでしょ?なんでダメだっていうの?」

「だ、って、あっきもち、いい!あっもっと!」

「そうだね、よく言えたね。もっとするよ?もっともっとする。気持ちいい?」

「うん、うんっ!きもちいい!もっと!もっとして、あっああっ!!」

背の高い男に抱かれて、火置さんは気持ちよさそうに脚を開いている。股関節が外れそうなくらい、ガバっと。……そんなに気持ちいいんだ。
たくさん脚を開くから、結合部がよく見える。火置さんの中を出たり入ったりする、長い男性器。君の粘液で、その男性器はぬらぬらと妖しげに光っている。

感じている君の声は、きっといつもより高くなる。いつもみたいな厳しさがなくなって、ただただ甘ったるくなる。きっと、そうだ。

僕は、自分の性器をしごき始める。ゆるりゆるりと。誰かに抱かれている火置さんを、僕がじっと見ている……。

「きもち、いいっああっあっ!」

「ユウ、凄い音。よく聞いて?ぐちょっ、ぐちょって。ほら、聞こえる?」

「やあ、あっ、きこ、える……っんっ」

「すごいね、たくさん濡れてる。気持ちいいんだね。ユウ、感じやすいね」

「気持ちいい……すき、すき……」

相手にキスをせがむ火置さん。……脳が沸騰しそう。セックスのシーンは興奮するのに、彼女が誰かにキスをせがむと考えると、また胸が苦しくなってくる。
やだな、やめてくれ、キスしないでくれよ。……でもなんで嫌なんだろう?わからない。

止めたくても、想像は止まらない。前は火置さんが男に媚びるところなんて想像できなかったけど、今ではできる。
多分彼女は、愛する人の前ならトロトロになる気がする。最近強く実感しているけど、彼女はとても優しい。魂の柔らかさを、表面の硬さで必死に隠してる。

「ん、ん、ん……っあ、すき、すき、すき、だいすき……」

「うん、俺も好きだよ。好き、ユウ好き。気持ちいいね、大好き。気持ちよくて好き」

「あ、あ、いっぱい、して……」

「もちろん。いっぱいするよ。いっぱいしようね」

男に揺さぶられて、幸せそうに眉を下げる火置さん。目をつぶって、口を開けて、自分でも腰を振ってる。男が動きやすいように、入りやすいように、必死にお腹を丸めて自分の入口を上に向けてる。

ああ、その入口の角度……奥まで入れるし、すごく動きやすいだろうな。僕の手に力がこもる。シュッシュッシュッ、自分を自分で慰める音が聞こえる。とても、滑稽だ。滑稽で、気持ちよくて、絶望的。

「うっ、あ、ああっ……!!」

僕は射精する。僕の性器の先端から勢いよく出る精液。自慰が久しぶりで、僕は軽く放心状態になる。

「あ、あ、あ…………」

ピクッピクッと、僕のモノが別の生き物みたいに上下に動く。遠くまで精子を飛ばすために、筋肉が収縮してるんだ。……遠くまで飛ばしたところで、何にもならないのに。やっぱり滑稽だ。

終わって気持ちよさが引いていくと、口から妙に乾いた笑いが漏れる。……これをあと半月続けるってことか。考えるだけで、気が重いな。

僕は自分の死刑を、あらためて心待ちにする。

※彼が見てしまった彼女の夢はこちら

※同じ時系列の本編はこちら

※この話の第二弾はこちら

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