彼女の発情期に関する彼の考え

「もっと、ああ、気持ちいいっ!もっと、ほし、い、ヤミ、ヤミ、もっと…!」

彼女は、月にだいたい1回から2回くらい、こんな状態になる。

これはなんだろう。発情期?でもヒトは年中発情できるから、発情期なんてないはずなんだけどな。

このモードになっちゃった彼女は、もう止められない。午前中からソワソワしているし、体全体が『いつでもOK』って感じで……小さな、本当に小さなきっかけがあるだけで、唐突にそれは始まる。

……そんなこんなで、今僕は彼女をソファの上に四つん這いにさせて後ろから攻めている。僕達は身長差があるから、段差を使わないと後ろから・・・・が難しいんだ。

にしても動物みたいだなぁって、頭の端っこの方でもう一人の僕が呆れてる。隣の部屋に行けばいいじゃないか、せめてベッドを使おうよ……。

でも、こっちの方がきっと、今の僕達にはお似合いなんだ。

この時の君のいつもと違う点を挙げるなら……まず、声がいつもより確実に大きい。

壊れたラジオみたいに何度も僕の名前を呼ぶし、いつもよりも数倍甘い声でほしがってくる。反応もいつもより大きくて、たくさん声が出る。

この時によく出てくる言葉は「ほしい」「もっと」「キモチイイ」「強くして」……こんなところ。

普段はあまり出てこない言葉が飛び出すから、あ、今はそういう気分なんだってすぐにわかる。

……それから、なんだか顔がだらしなくなる。

いつものキリッとした感じがなくなるし、君最大の魅力のひとつである聡明な瞳の輝きが失われてトロンとする。

なんならの彼女は、セックスするずっと前から頬が常に紅潮してるし、口元も緩んで、ため息も止まらない。つまり僕のものになりたくてなりたくて堪らない、他にはなんにも考えられない(……と思ってくれてたら嬉しい)……っていう顔をしてるんだ。

……正直に言おう。どちらかと言うと僕は、普段のセックスの時の君の方が『素敵』だとは思ってる。優しく穏やかで、たおやかかつ繊細で……僕の全てを温かく包み込む君。あの時の君と僕は、心で繋がっている気がする。

スイッチが入っちゃった方の君は、ただただ僕にめちゃめちゃにされたがってるだけ。この時は何をやっても(限度はあるだろうけど)嫌がらないし、酷く攻めることで嫌がるどころかむしろ悦んでしまう。

この時の君を前にしたほうが、なぜだかいつもより冷静になれるから……冷静に君を攻める。今みたいに後ろからすることも多くなる。

あと、普段よりちょっとだけヒドくしたりもする。耳元で恥ずかしいことを言ったりもする。

特に僕の『声』への反応は凄く大きくて、耳元で囁くだけでブルッと身を捩ってものすごく感じやすくなる。

……もしかして君だけじゃなくて、実は僕も魔法使いだったのか?君が感じやすくなる呪文をかけていたのかも……?

そして……最初は冷静な僕もあまりに乱れる君を前にすると、結局はどんどん興奮してきてしまう。

しかもその興奮は脳髄を痺れさせるクスリみたいな感じで、すごく「イケナイモノ」な気がするヤツ。

……あぁ、もうどうだっていいや。この快楽に身を任せていたい。何も考えないで気持ちよくなりたい……。
そういう自堕落な、本能だけで頭と心を一切使わないような……そんな類の興奮だから、ある種の中毒性があって、結構危ない気がしてる。

…………あぁどうしよう、せっかく頭をクリアに保ちたいのに……。君がそんなんだから、僕もだんだんおかしくなってくる……。

君のせいだ、全部、君のせい。君の方から誘ってきたんだから、今日はもう責任をとって一日中ただただ僕の劣情を受け止めて。

泣いたって、嫌がったって……たとえ痛がったってやめたくない。むしろ泣いて許しを請う君を、今は見たくてしょうがないから。

だって、今日の君は発情期。僕から酷くされることを望んでいる。だから、もっともっと酷くしてあげる。頭おかしくなるまで酷くしたい。そして、僕も一緒に狂っちゃおう。もう、何も考えたくないんだ。

(続く)

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