発情期の彼女と僕・後編

※前編はこちら

「嫌、だ……!他の人にされるなんて、死んでもいや……!!死んでも、いや……だけど…………、死にたく、ない……。死ぬならヤミと死ぬ。酷いこと言わないで、酷い…よ。

他のことなら何だってするから、他の人となんて言わないで……」

いちいち君の言葉は、僕の頭をクラクラさせる。『死ぬなら僕と』『他のことなら何だってする』威力の高い言葉がいくつも飛び出すから、体力が持たない。どうしてくれるんだ……。

「……わかった。じゃあ、この体勢のまま君から僕のものを欲しがって。僕が与えるんじゃなくて、君が僕を欲しがってるってことを見せて。僕はここから動かないから、君が自分で動いて。それをしてくれたら……信じるよ。君が僕だけをほしがってるって」

……言いながら冷静になって、ちょっと笑いそうになる。なにが『じゃあ』なんだろう。こんなくだらない命令をして、馬鹿みたいだな。

でも、もうこれくらいしか妥協案が思いつかなかったんだ。頭が回らない。本当に、不憫でならないよ。こんなことに付き合わされて……君も大変だ。

………あ、でもそうだった。そもそも今日は君から誘ってきたんだった。……やっぱり、君のせいかもしれない。君が発情・・してなければ、僕はこんなことにはなっていなかったんだから。

「ん……、んっ…」

ソファの上に四つん這いになったまま、君はおしりを動かして、後ろに立っている僕のものを探す。傍から見たら、滑稽な二人だ。でも、僕からの視点はとても扇情的。丸くて張りのあるおしりが、震えながら僕を求めている。

「こっちを見たら駄目。後ろ向きで探して」

「はぁ、はぁ、ん……」

嫌がる言葉も発さずに、僕の命令に従う君。君がそんなんだから……僕が調子に乗るのに。

……ほら、そこじゃないよ、もう少し左。あ、先端がおしりに当たったね……。え、当たっただけでピクッとするのか?君って本当に……。

……ほんの少しだけずらして……そうだ、そこ。もう、自分で入れられるはず……。

「あ…あ…あああああ…」

彼女はゆっくりと、僕のものを自分に埋め込む。ズブズブと、中に入っていく感覚。入るときの感覚が、僕はとても好き。やっと欲しい物を手に入れた……そんな気持ちになるから。

彼女の恍惚の声が、局部に響く。思いっきり動きたい衝動に駆られるけど、君の方から動いてって言ったのは僕だ。いきなり約束を破る訳には、いかないよな……?

「んっ…んっ…んっ…はぁっ」

彼女は一生懸命、四つん這いのままで前後の運動をする。色々と器用な所がある彼女なのに、なぜだかこういう動きはひどく不器用だ。いつになったら上手になるんだろう。……それでも一生懸命動く様が、いじらしい。

真っ白で丸いおしり。僕を咥えるその中心は、充血して真っ赤。見ているとたまらなくなって、僕はそのおしりに手を添える。出し入れをサポートするように、彼女を動かす。

「あっ、あっ、あっ」

あ……そんなに気持ちよさそうな声を出して……。どうしよう、僕ももう、限界……。さっきの言葉からものの数分程度なのに、もう約束は反古だ。だいたい、そんな拙い動きをされたら、焦れておかしくなってしまう。

「……っ!!あぅっあっあっあっ!」

いきなり動き出した僕に反応して、彼女がひときわ大きな声を上げる。もうダメだ、僕ももうそろそろイきたい。火置ひおきさん……一緒にイこう……。

何もかもが真っ白になって、体が脱力する。この瞬間はいつも、ちょっとしたスーパーナチュラルな何かを感じるほど……つまりこの世のものとは思えないような恍惚を感じるんだ。でも、それはほんの一瞬のこと。急激に温度が下がって、世界が元に戻っていくのが悲しい。

何度も言うけど、僕は終わりを迎えたくない。ずっと彼女の中に入っていたいんだ。達しなくてもいいとすら思ってる。……でも、もちろんイクのは気持ちいい。究極の選択、終わることのないジレンマだ。

「………火置さん、今日どうしたの?なんかすごかったよ……?」

呼吸を整えて、彼女に尋ねる。一度吐き出すと、冷静になる。彼女にも優しくできる。男ってなんでこうなんだろうな。

「……だって最近のヤミって……いつもものすごく優しいんだもん」

…………?どういうこと?優しいのはいいことだと思ってたけど……違うのかな?

「本気で呆れてるヤミも、怒ってるヤミも、意地悪なヤミも、全部ほしいのよ。そっちのヤミだって、全部私のものだもん。他の人のものじゃない。でもヤミは……他の人に冷たくすることはあっても、私には優しい。優しいのは、もちろんすごく嬉しいんだけど……。

……私は………欲張りなのかもしれない」

「………………」

「私に見せない顔があっちゃ嫌なの。怖いあなたも優しいあなたも、たまらなく好き。どちらともひとつになりたい。

……この気持ちが、たまに爆発するの。それで……こんな風になるんだと思う」

「………………」

返す言葉が見当たらない。彼女の紡ぐ言葉の破壊力は、凄まじい。さすが……魔法使いといったところか?

『メチャクチャに犯してくれれば誰だっていいんじゃない?』なんて言葉を放った自分を今更になって恥じるけど、彼女って追い詰めると初めて本音を話してくれるのは確かなんだ。

……もしかしたら、彼女自身もそれをわかっているのかも。だから、あえて僕に酷くしてほしいのかもしれない。そうすれば……素直になれるから。

世間ではよく『男の方が口下手で不器用』だなんて言うけれど、僕達に関して言えば彼女の方が断然不器用だと思う。……自分で言うのもなんだけど、僕は素直さが取り柄。隠し事なんて、一つもないんだよ。

月に2回のこの時間に、僕らは身体に溜まった言葉やら秘めた欲望やらの全てをぶつけ合って、お互いを確かめ合ってるんだね。

不器用な彼女にとって、この日は自分をさらけ出して素直になれる特別な時間。僕にとっては、積極的な彼女を満喫できるありがたい時間なのかもしれない。


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