第一回カミサマ面談
「さて、それでは『第一回カミサマ面談』を始めましょうか。囚人番号2084……灰谷ヤミ。どうですか調子は?」
「……悪くないよ。本がないという以外は、結構快適だと思う。トイレもちゃんと個室になっているから驚いた。欲を言えば、1日1回以上は部屋の外を散歩させて欲しいけど」
「……あなたは敬語が使えない若者なんですね。……まぁ、いいでしょう。で?部屋の外を散歩ですか……。そうですね……考えておきます。
…………それでね、私が言いたいことはこんなことじゃないんですよ、囚人番号2084。あなた、私に報告すべきことがありますね?」
「……彼女のこと?」
「そうです。私はとうに気づいていましたよ。でも、そのままにしていました。あなたが自分から報告してくれるかどうか、待っていたんです。
もうそろそろで彼女があなたの部屋に来てから丸一日が経とうというのに……結局あなたからは報告してくれなかった。……残念です」
「…………報告したら、問題になると思ったんだ。信じてもらえるかもわからなかったし……。だって突然女の子が空間にできた穴から降ってきたんだから」
「不思議なことがあるものですね?」
「…………それだけ?」
「他に何か言うべきことでもありますか?」
「いや…………。…………彼女は……どうなるんだい?」
「どうなるも何も……来てしまったものは仕方がありません。いていただくしかないでしょう」
「えっ?」
「……何か問題でも?」
「いや……。え、まさか、僕の部屋にいさせるってこと?」
「そうですよ?だって彼女から来てしまったんだから……しょうがないでしょう」
「それなら……せめてベッドをもう一台追加してくれないか?昨日僕は床で寝たんだ。流石に、今日も床で寝たら背中が痛くなりそうだよ」
「同じベッドで一緒に寝たらいいんじゃないですか?」
「………………」
「嘘ですよ。ほんの冗談です。この棟の風紀が乱れるので、むしろやめてほしいです。で、ベッドですね。わかりました、早速手配します。……ベッドだけでいいんですね?他に必要なものは?」
「…………なんでもくれるのかい?」
「まさか。必要なものだけです。いい気にならないでくださいよ。あなたは死刑囚なんですからね」
「…………知ってるよ。……特に、ないな。必要なものは」
「わかりました。……それでは、面談は終わりです。次の面談はまた来週を予定しています。それまでどうぞ、ごきげんよう」
「刑務所編」の目次を開く
第一章 夕闇の出会い
第二章 神様
- 第七話 2日目の朝 火置ユウの目覚め
- 第八話 2日目の朝 灰谷ヤミの目覚め
- 第九話 二人の朝ご飯
- 第十話 ヤミの神様
- 第十一話 神様との出会い
- 第十二話 カミサマとの邂逅
- 第十三話 第一回カミサマ面談
- 第十四話 面談を終えて
- 第十五話 シャワーの時間
- 第十六話 口喧嘩
- 第十七話 闇に沈む記憶
第三章 探索
- 第十八話 自由時間
- 第十九話 刑務所探索その1
- 第二十話 図書室にて
- 第二十一話 ヤミの違和感
- 第二十二話 ヤミの神様の話~光の救世主~
- 第二十三話 出会いから5日
- 第二十四話 彼女はいかにして魔法使いになったのか その1
- 第二十五話 ヤミの神様の話~禁忌の4項目~
- 第二十六話 カミサマとあなたのお話
第四章 夢
- 第二十七話 よき友人とは
- 第二十八話 彼女はいかにして魔法使いになったのか その2
- 第二十九話 続・カミサマとあなたのお話
- 第三十話 彼の話を聞く その1
- 第三十一話 ヤミの神様の話~神様の愛~
- 第三十二話 神様の夢
- 第三十三話 もう一人の死刑囚
- 第三十四話 Clair de Lune
- 第三十五話 私の決意
- 第三十六話 刑務所探索 その2
- 第三十七話 彼の話を聞く その2
- 第三十八話 放棄された刑務所
- 第三十九話 刑務所内の追いかけっこ
- 第四十話 ヤミの心の中
- 第四十一話 その日の夜、彼は夢を見る
第五章 闇(連載中)
- 第四十二話 面談前のアイスブレイク
- 第四十三話 第二回カミサマ面談
- 第四十四話 第二回カミサマ面談を終えて
- 第四十五話 闇に沈む記憶 その2
- 第四十六話 別々の部屋
- 第四十七話 彼の殺人~ヤミの神様の話
- 第四十八話 灰谷ヤミの罪
- 第四十九話 死刑まで2週間を切った彼がシャワー室で考えた事とした事
- 第五十話 動かずのエレベーターの正体
- 第五十一話 火置ユウのカミサマ面談
- 第五十二話 ジストニア
- 第五十三話 決別
第六章 真実
最終章 二人の夏休みへ
※次のエピソードはこちら