夏休みの夕闇~刑務所編~ 第十四話 面談を終えて

面談を終えて

「おかえり」

カミサマとの面談を終え、自分の独房に戻った僕を火置さんが出迎えてくれた。彼女の顔を見て、ホッとしている僕がいる。

『カミサマ』が彼女を認識していたということは、彼女は僕の幻覚ではなかったということだ。

「久しぶりに部屋の外に出たからか、すごく疲れたよ。カミサマとの会話も、妙にエネルギーを取られる感じがした。……僕はあいつをどうも好きになれない」

「そのカミサマって……一体何なの?」

「知らない?この国の偉い人だよ。10年くらい前かな?カミサマが国会を占拠したんだ」

「……は?……え、朝話した時、国のトップは総理大臣だって言ってなかった?」

「うん、政治的なトップは総理大臣だよ。『カミサマ』は、この国の宗教のトップなんだ」

「…………この国に国教ってあったっけ?」

「それまではなかったよ。カミサマが来てからは、一応国民の宗教は『カミサマを信じること』になった。……だからといって以前と何が変わったというわけではないけどね」

「ちょっと……どういうこと?」

火置さんはいまいち事態が飲み込めないらしい。そうか、やっぱりこれは異常なことなのか。

あまりにもその状態が続きすぎて、最近はこの国に『カミサマ』がいることに何の違和感もなくなっていたけど、やっぱりおかしいんだ。

「カミサマがいる、というだけで国は普通に動いているんだ。さっきも言った通り総理大臣もいるし、裁判官もいる。ただその一角にカミサマがいるだけだ。

もしかしたら行政、立法、司法にカミサマが関与しているのかもしれないけど……実際、刑務所のひとつをカミサマが管理しているんだから、少なくとも『行政』には関与しているんだろうな……とまあ、実態としてどうなっているのかは僕らみたいな一市民にはわからないし、生活には何も変わりがないよ。そういうものなんだ」

「え、………カミサマって……何?人間?」

「人間以外に何があるんだ?自分でカミサマって名乗っているだけだろ?……やめてほしいけどね。僕が信じる『神様』とは全然違う存在だし」

彼女は『全くわけが分からない』という表情でぽかんと口を開けている。

「え……この世界は、こんなことになってたの?」

「そうだよ。君はこの世界出身って言ってなかった?知らなかったんだ」

「私がこの世界を離れたのは……11歳のとき。だから……ちょうど10年前くらいね」

「もしかしたら、入れ替わりの時期だったのかもね」

「……そうなのかも」

会話が一段落したちょうどその時、独房の扉がノックされた。……今日はやたらと騒がしい日だな。

すると扉が開き、さっきと同じ看守が現れた。

「シャワーの時間だ。シャワールームは廊下の右を進み、突き当りを左に曲がった所にある。一部屋しかないから、交代で浴びてくるように」

僕達は顔を見合わせる。なんだか普通の刑務所生活っぽくなってきた。

「……お先にどうぞ?」

火置さんが僕に先を譲ってくれた。僕はシャワーを浴びに行くことにする。

「刑務所編」の目次を開く

第一章 夕闇の出会い

第二章 神様

第三章 探索


※次のエピソードはこちら

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