夏休みの夕闇~刑務所編~ 第七話 2日目の朝 灰谷ヤミの目覚め

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第一章 夕闇の出会い
第二章 神様
第三章 探索
第四章 夢
第五章 闇
第六章 真実
最終章 二人の夏休みへ

第二章 神様

2日目の朝 灰谷ヤミの目覚め

~灰谷ヤミの死刑まで残り24日~

刑務所の朝は早い。

6時には点呼が始まって、7時30分には朝食が運ばれてくる。消灯時間も21時と早いから、朝は何の苦も無く目覚めることができる。こんな規則正しい生活を続けていたら、多分長生きができるだろう。死刑囚にこんな健康生活を強いるなんて、皮肉な話だと思う。

……といっても、看守によって点呼が行われていたのは、この『特別棟』に移されるまでの話だ。

ここに来て5日経つが、独房の扉はまだ一度も開けられていない。僕は未だに看守と顔を合わせていないのだ。

そういえば……この棟に移される直前、別の囚人からこんなことを言われたのを思い出す。

「お前が明日行く棟って……あれだろ。『カミサマ』が自ら管理してるっていう特別棟。

あそこに行ったやつは絶対にこっちに戻ってこられない。面会だってできなくなるし、部屋の外に一歩も出してもらえないって噂だ。……あそこに行ったら最後、頭が狂って死ぬまで部屋に閉じ込められるらしいぜ……。

……あ、お前はどっちにしろ死刑になったから帰る予定はないんだったか!それじゃあ、あんまり関係のない話だったな!悪い悪い!」

あのときは『ただの噂』だと思って話半分に聞いていたけれど、もしかしたら本当だったのかもしれない。

死刑執行までこの部屋から出られないのかな?それはちょっと厳しいかも。……とりあえず、そろそろシャワーを浴びたい。

「おはよう。……よく眠れた?」

朝から考え事の海の中を漂っていた僕の耳に入ってくる、クリアなアルトの声。

そうだ。僕は今、一人じゃないんだった。えっと……そうだ、火置ひおきさん。火置ユウとの共同生活が始まったんだった。

火置ユウ。21歳。黒髪の魔法使い。この広い宇宙でたった一人の、時空の魔女。

「……おはよう、火置さん起きてたんだね。一人じゃないってことを、すっかり忘れてた」

「…………なかなか衝撃的な出会いだと思ってたのに、忘れちゃってたの?あなたって結構マイペースなのね……」

彼女は肩を竦めながら話す。昨日もそうだったけど、彼女はちょっとシニカルな物言いをする。……そういう雰囲気は、嫌いじゃない。

「あ、そういえば……さっき扉がノックされてたよ?一瞬ドキッとしたけど、誰も入ってこなかった」ふと思い出したように彼女が言う。

そうか、今の時間は……7時40分。おそらく朝食のトレーが運ばれてきたんだろう。僕は布団を畳んで脇に置き、扉の下部に設置された小窓を開けて朝食を部屋の中に引き入れた。

チラチラとこっちを見る彼女に朝食の半分を勧め、最初は遠慮していた彼女だったが結局全てのメニュー――白米と焼き鮭とほうれん草のお浸しとわかめの味噌汁――を二人で分け合った。

満腹には程遠いけれど、誰かとの朝食が久しぶりで僕は存外に満足できた。……彼女の腹からは絶えずクルクルと音が聞こえていたから、満足できたのは僕だけだったみたいだけど。

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