夏休みの夕闇~刑務所編~ 第四十九話 火置ユウのカミサマ面談

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第一章 夕闇の出会い
第二章 神様
第三章 探索
第四章 夢
第五章 闇
第六章 真実
最終章 二人の夏休みへ

火置ユウのカミサマ面談

「それでは始めさせていただきますね。前回の面談で灰谷ヤミに『結論から簡潔に』と言われてしまったんで、結論から言わせてもらいます。あなたに言いたいことはたったの二つ。『灰谷ヤミを死なないように説得して欲しい』のと『私に協力して欲しい』のです」

「…………理由が知りたい」

「わかりました、では『灰谷ヤミを死なないように説得して欲しい』の方から行きますか……。理由は簡単、私、彼の信仰心の謎を解き明かしたいんですよ」

「彼は悲劇的な人生に押しつぶされそうで、自分を救うために自分の神にすがった。それで終わりじゃない?」

「うわー、すごく冷たい言い方ですけど……確かにその通りなんですよねえ。だけど、気になりません?普通、耐えきれないほどつらいことがあった時って、自分の神様を作ってそれにすがるって発想になります?せめて既存の宗教にのめり込むならわかりますけど。

一般的な選択肢って、自殺するとか、精神が壊れて犯罪に手を染めるとか、逆に虚無廃人になるとかなんですよ。でも彼は、少なくとも一見したところは壊れてないじゃないですか。それってやっぱり、強靭な信仰心のおかげだと思うんです」

「……そんなに彼のことを知りたいなら、死刑をやめて彼を生かせばいい話じゃないの?権限はあなたが持っているんでしょ?」

「いやいや、あなただってわかっているでしょ?死にたい人間を無理やり生かしたところで、何にもならないんですよ。そんなことをして私に協力してくれるはずもないでしょう。

死を望む彼を無理やり生かしたら、多分私達が考えもつかない方法で死ぬための計画を考えると思いますよ、彼。天国への執念がすごいですし……」

「…………」

「だから、あなたに何とかしてほしいんです!あなたにならできるはずなんですよ!そこで……あのね、提案があるんですけど……その、気を悪くしたらすみません。えっと、彼に色仕掛けとか……してくれません?一回やってくれれば多分彼、生きたくなると思います。確実に」

「……馬鹿じゃないの??そんな方法で生きたいと思わせてどうするの……!?大体、私だってずっとここにいるわけじゃない。仮にそんなことで生きたいと思ったとして、私がいなくなったら彼はもっと苦しむじゃない!」

「そんなに気にすることですか?一度自分の意思で生きたいと思ったら、あとはもう彼次第じゃないですか?その先はあなたの責任じゃないでしょう。個人主義のあなたらしくない考え方ですね」

「クズみたいなやつなのね、思った通り」

「……嫌われてしまいましたか……?残念です……仲良くなれると思ったのに……」

「次の理由を早く教えて。そうしたら私の質問に答えて。それでもう、帰らせて。不快だわ」

「そうですね、次にいきましょう。実際のところ灰谷ヤミは、死んだら死んだでもいいんですよ。また新しいサンプルを研究すればいいだけですから」

「やっぱり実験してるんだ」

「気づかれてましたね。でも、別に隠してないので構いません。で、『私に協力して欲しい』。こちらの方がとてもとても、非常に重要です。今日はこの打診をしたくて、わざわざフロアまであなたを呼びに行ったんですから」

「断られるってわかってるよね?でも一応聞くわ。協力って何?あなたは何がしたいの?」

「あなたの『時空の魔術』の力を、私に貸してください」

「…………は?」

「あなたが持っている『時空の魔術の力』があれば、時空を超えてどんな世界も行き放題なわけですよね?私はね、この世界の全ての人間を自分の信者にしたいのですが、一つの世界じゃ満足できないんです。ゆくゆくは、次の世界、その次の世界の人間も全てを自分の信者にしたい。そして、最終的には時空にある全ての世界の生きとし生けるものから愛されたいのです!!素晴らしい目標をたてました、私!!」

「教えてくれてありがとう。答えは、ノーよ。次は私の質問に答えて」

「まってまって待ってくださいって……早い、さすがに答えが早すぎます。10秒くらいは悩んでほしかった。結構本気でショックです」

「質問するわよ?」

「ストップストップ。よーく考えましょう。あなたは『カミサマお抱えの魔法使い』となる。どうです?悪い響きじゃないでしょう?」

「全く興味ない」

「そうなると……私は最終手段を取らざる得なくなりますが、問題ないですね?」

「……私を拷問する?あの看守、拷問好きそうだもんね」

「いえいえ。あなたは自分が拷問されても口を割らないタイプでしょ?あなたが私に協力しないと言うのなら、切り札……濁さずに言えば、灰谷ヤミを使います。

私に逆らえば、灰谷ヤミは酷い目に遭います。人類が考えうる一番苦痛な方法で、飽きるほどたっぷりと時間をかけて、死ぬことになるでしょう」

「気持ちいいくらいド直球なのね」

「だからあなたには、彼が死刑になる2日前までに答えを出してほしいんです。じっくり考えておいてくださいね。……で、あなたから質問でしたっけ?なんですか?答えられる範囲でお答えしますよ?」

「……念の為の確認。この刑務所は『時空のひずみ』にあって、あなたは『ひずみの影響で生まれた存在』ということでいい?」

「はい、問題ありません」

「……ありがとう、よくわかった。ちなみに、ひずみを放置するとその世界が壊れてしまうっていうことは知ってる?私が協力を拒み続けたら、この世界は消えるかもしれないわよ?」

「協力を拒んでいる間ずっと灰谷ヤミが苦しみ続けますよ?耐えられます?」

「…………。……もし……私があなたの言うことを聞いたら、私達はどうなるの?それがわからないと答えを出せない」

「まず灰谷ヤミのことは、何も心配いりません。彼にはストレスの無い生活を約束します。なぜなら、強いストレス環境下にある彼の信仰心の強さは、もう十分わかっているからです。私が今彼について知りたいのは『死にたくなくなる・・・・ほど幸せだった時、彼は自分の神様をどうするか』です」

「私の処遇は?」

「あなたは……まあ、今みたいな自由さはなくなるかもしれません。私がお願いした時には、私の元に来て、私のために時空の魔術を使ってほしいからです。

でも、それだけですよ?私はあなたの力を使って世界征服を狙っているわけじゃない。時空の魔法が必要な時以外は、好きにしていただいて構いません。だから、付かず離れずのゆるい関係ってことです。気楽じゃないですか?お互いが必要なときだけ、協力し合えばいいんですから」

「……………………考えさせて」

「ええ、よろしくお願いします。あと、そうだ。もう一人の囚人はこの間死んでしまって今フロアにはあなた方以外誰もいないですから、もう独房の施錠をやめようと思います。やりましたね!1日中自由時間です!施錠エリア以外、いついかなる時もどこでも行ってOKにします。……就寝後も閉めませんからね?何でもしてもいいですよ?」

「…………。!!待って!そのことで、聞きたいことがあるの!」

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